てんかんと精神症状

てんかんのある患者さんは、てんかんに加えて精神症状を併発し、それにより生活への影響が見られることがあります。てんかんの方では不安、うつ状態、幻覚妄想状態、発達障害、解離性障害等の様々な精神症状が出現する割合が一般の方よりも高いとされています。
てんかんの方で見られる精神症状は大きく①発作に関連したもの、②薬のよるもの、③てんかんに精神症状が合併したものに分けられ、これらはそれぞれ治療法も異なります。

また、原因は複数存在することもあり、患者さんごとにどの要因が重要かを見極める必要があります。

精神症状の種類

うつ状態

気分が落ち込んで悲観的な考えにとらわれたり、意欲や楽しいという感情が低下して、普段、普通にできていることができなくなったりする症状です。てんかんの患者さんはうつ状態になりやすい傾向にあります。うつ状態の患者さんには、ストレス因子の軽減、環境の調整、抗うつ剤を使用するなどの方法で治療していきます。抗てんかん発作薬の副作用でうつ状態が生じることもあり、その場合には抗てんかん発作薬の減薬・中止・変更も検討します。

幻覚妄想状態

他の人に聞こえない声が聞こえたり(幻聴)、他の人に見えないものが見えたり(幻視)、実際にはないにおいを感じたり(幻臭)、些細なことをきっかけに事実とは異なる考えを信じ込んでしまって訂正が効かない状態(妄想)が出現したりする状態をさします。これに対する治療は抗精神病薬といわれる、いわゆる統合失調症に対する薬の服用が主になります。ストレス因子の調整も必要です。うつ状態と同じく抗てんかん薬の副作用で症状があらわれることもあるため、その場合には原因となる抗てんかん発作薬の減薬・変更も検討します。

心因性非てんかん性発作(解離)

外見上はてんかん発作に似ていますが、発作症状や脳波などの検査でてんかん発作の特徴が見られないものをさします。心因性非てんかん発作の診断は、問診等からほぼ見当がつくこともありますが、てんかんとの見分けが困難で、他の医療機関(てんかんセンター)へ精査(入院してのビデオ脳波検査など)をお願いすることもあります。
心因性非てんかん発作した場合には、ご本人と家族への説明や、症状を起こす原因となるストレス因子を調整することが第一です。いずれにしても、長期的にはストレスへの対応能力を伸ばし、てんかん発作に似た症状を起こしにくくすることを目標とします。不眠やうつ状態の症状が出ている場合は薬物治療も行われることもありますが、効果は限定的です。